June 13, 2010

なるほドリ はやぶさ君、いよいよ帰ってくるね。どんな小惑星に行ったの?

 はやぶさ君 地球と火星の間の軌道を回る小惑星イトカワ(注2)だよ。地球から比較的近く、まだだれも行ったことがない小惑星だったんだ。到着まで約20億キロ、2年4カ月もかかったよ。

 Q 気が遠くなるね。すごいパワーのエンジンを持っているのかな。

 A 「イオンエンジン」という新型のエンジンだよ。キセノンガスに電気を帯びさせて、静電気の力でものすごいスピードで噴射させた反動で動くんだ。燃費がいいので燃料が少なくてすむのが特徴だよ。このエンジンの力は、地球上では一円玉をやっと持ち上げるくらいしかないけど、地球を飛び出した後で続けて運転すれば時速5000キロまで加速できる。

 それに、「スイングバイ」(注3)という航法を組み合わせたので、たった数十キロの燃料でイトカワへ到着できたんだ。

 Q イトカワって、どんな小惑星?

 A 一番長いところが540メートルしかない、小さな小惑星だ。ピーナツのような形をしていて、表面はなだらかなところと、大きな岩がゴロゴロしているところがあったよ。人類が初めて見る天体だから、ぼくもドキドキしながら写真を撮ったりしたんだ。

 Q 岩石はどうやって採ったの?

 A イトカワの重力は地球の10万分の1しかないので、シャベルですくう動きをすると、反動で宇宙へ放り出されてしまう。だから、ぼくの下側につけた筒のような装置を使った。筒の先がイトカワの表面に触れると弾丸が発射され、砕けた岩石が筒の中を上って容器に入る、という方法で挑戦したんだ。

 Q うまくいった?

 A 着陸はだいたい予定通りだったけど、岩石採取の弾丸が発射できたかどうかは分からないんだ。でも、研究者の人たちは「着陸の衝撃で表面の砂が舞い上がって採れた可能性がある」と話していたよ。

 Q それはよかった。あとは帰るだけになったんだね。

 A ところがね、2度目の着陸の後、ぼくは地球と交信できなくなっちゃったんだ。イオンエンジンとは別の化学エンジンの燃料が漏れて姿勢がおかしくなって、太陽電池が太陽と違う方向に向いてしまったようなんだ。発電ができなくなったぼくは力がなくなり、気を失ったんだ。

 Q それは大変!

 A 7週間くらいは意識がなかったみたい。そのうち太陽電池に太陽が当たり始めて発電が始まったんだ。その時、地球からぼくを呼ぶ声が聞こえた。ぼくは必死に応えたよ。その返事に「うすださん」が気付いてくれて、交信が復活したんだ。

 Q うすださん?

 A 長野県佐久市にある臼田宇宙空間観測所のアンテナ(注4)さ。ぼくみたいな探査機との交信の仲立ちをしてくれているんだ。

 Q その時の体調はどうだった?

 A 意識は戻ったけど上手に動けなくて、あちこち検査してもらったんだ。徐々に動けるようになったけど、地球に帰るタイミングを逃してしまって、帰るのが予定の07年より3年も遅れてしまったんだ。

 Q 7年間も一人で旅をして寂しくなかった?

 A 全然寂しくなかったよ。うすださんたちに協力してもらいながら、ずっと管制室の研究者の人たちとお話をしていたからね。調子が悪くなると、直す方法を考えてくれたり、良くならない時にはそれ以上悪くならないよう気を配ってくれたり、別の解決法を考えてくれた。一緒に旅をしているみたいだったよ。
 ◇太陽系の歴史、解明に期待

 Q その旅も、もうすぐゴールだね。イトカワの砂が入っているかもしれないカプセルは、どうやって地球に帰るの?

 A ぼくは13日午後7時50分ごろ(日本時間)、地球から約7万キロの高さでカプセルを切り離す。カプセルは大気圏に突入して、最高約1万~2万度の熱にさらされるけれど、特製の断熱材が中身を守ってくれるんだ。真夜中に、オーストラリア南部のウーメラ砂漠に着地する予定だよ。

 Q カプセルに何か入っていてほしいね。

 A 小惑星には、太陽系ができた約46億年前の姿がそのまま残っていると言われているので、もしイトカワの砂を分析できれば、太陽系の歴史がもっと詳しく分かるようになるかもしれないね。

 Q 帰ってきたはやぶさ君に、直接「お疲れさま」って言いたいな。

 A ありがとう。でも、それはできないんだ。ぼくはカプセルを正確に落とすため、できるだけ地球に近づかないといけない。カプセルを切り離した後、大気圏に突入して燃え尽きてしまうんだ。ぼくは流れ星になるよ。

 今、ぼくの目の前には真っ青な地球が見える。長旅でいろいろな星を見たけれど、やっぱりぼくの故郷が一番素晴らしい星だと思う。大変なこともいっぱいあったけれど、新しいことにたくさん挑戦できて、思い出がいっぱいできたよ。(JAXA所属)